今週のお題「お父さん」
もう50年近く前のことだ。
田舎の会社(支社)で仕事をしていたが、今でいう単身赴任
で、東京で勤務することになった。
数年勤務して、田舎の支社に戻って家族と一緒にまた住める
ことになり、東京に迎えにいくのも兼ね、遊びに行った。
東京駅でのことだ。プロレスラーみたいな大きなガラの悪い
男が、昼間から酒を飲み、電車を待っている人たちにからみ
暴力まで奮っていた。自分は怖くて体が固まってしまったの
を覚えている。東京の人は冷たいと思ったのが、だれもその
人を助けず、すっと席を立って、逃げていった。警察もなか
なかこない。
そんな中、体は小さいが強靭な肉体を持っていたうちの父が
その男の腕をつかみ、「やめなさい」と言った。自分は父も
その男に殴られるのではないかとひやひやしていた。案の条
その男は父につかまれた腕を振りほどこうとしていたが、腕
が振りほどけない。後で聞いたが、うちの父の握力は80Kg
以上あったようだ。
男は驚いた表情を見せながら、父に謝っていた。父は謝るの
は自分ではなく殴った人に謝りなさいとやさしい口調で言っ
ていた。男は、父の言う通り殴った人たちに謝っていた。
そのうちに警察がきて、事情聴取がはじまった。
自分はそのとき思った。暴力ではなく、相手を諭すことがで
きるような大人になろうと。
その時から、防御だけに特化するよう、さまざまな格闘技を
習ってきた。
自分もそのときの父の年齢になったが、大切な家族などを守
ることができるよう日々努力している。